Home – SDGs for All

A project of the Non-profit International Press Syndicate Group with IDN as the Flagship Agency in partnership with Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC

Watch out for our new project website https://sdgs-for-all.net

|東ティモール|石油収入が子どもの発育阻害の問題解決にならず

share
tweet
pin it
share
share
Photo: Women travel long distances to get water in a single pump in Batugade, Bobonaro, Timor Leste. Credit: Annamarie Reyes

【ディリIDN=アナマリー・レイエス】

世界で最も新しい民主主義国東ティモールは、新型コロナウィルスの被害が少ない国だったが、現在、オミクロン株の感染拡大に直面している。しかしこの国は、パンデミック対策では比較的うまく対処しているが、児童の発育阻害の問題になると、状況は深刻である。

2002年の独立以来、東ティモールはこの問題に悩まされ続けて来た。同国の5歳未満の児童の発育阻害率は53~57%にのぼっている。

ディリに拠点を置く「ラオ・ハムトゥク」(東ティモール開発問題監視分析研究所)は、「適切な栄養が与えられないことで、東ティモールの子どもたちの将来の健康や教育、生産性、能力に影響が及んでいる。」と指摘したうえで、その原因について、「この状況は複雑で、容易に解決しえない。農業生産を国が重視せず、栄養価が高い食物は高価なため、入手が困難になっている。」と分析している。

グローバル飢餓指数(GHI)の最新の報告では、東ティモールの飢餓は「警戒すべき」レベルであり、世界全体で見ると「きわめて警戒すべき」レベルまでもうあと一歩の状況であるという。

調査対象となった107カ国のうち、東ティモールは実に106位であり、緊急の行動を必要としている。同国の下に位置するのは重大な状況に直面しているチャドだけだ。世界食糧計画は、人口130万の同国のGDPのうち1~2%が栄養不足のために失われていると推計している。

「単に栄養不足だけが問題なのではない。子どもたちは下痢にも苦しんでいる。清潔な水や衛生面の整備が遅れているからだ。」と「ラオ・ハムトゥク」のエリジアル・フェベス・ゴメス研究員(経済・国家財政専門)はIDNの取材に対して語った。

「東ティモール人口・健康調査2016年度版」によると、同国の世帯の僅か50%しか衛生施設を利用できず、58%しか自宅内或いは近隣で飲み水を利用することができていなかった。

児童の発育阻害は、量・質の面で十分な食料を消費できなかった結果であり、長期間にわたって発生することが多い。東ティモールでは、男女が生産年齢に達した段階で早くも問題が発生している。というのも、彼ら自身が栄養失調の状態で育ったからだ。

東ティモールの慢性的な食料不足は、農業生産性の低さや生活資源の不足、衛生施設や水、灌漑、保健制度、インフラの不備、長期的な経済的安定の欠如から来ている。

 

東ティモールの若者が立ち上がる

「ラオ・ハムトゥク」の子どもや青年に対する懸念は、この国の多くの若者の日常生活をみればよくわかる。

農村地帯で耕作することで家族がかろうじて生計を立てているティチャ・グスマオさんは、地元に貢献しようと努力している。「村で園芸活動に参加して、栄養や農業に関して持っている自分の知識を村の人たちと共有し、食料で若者たちを問題から救いたいと思っています。」と、グスマオさんはIDNの取材に対して語った。

ディリ郊外のヴィケケ地区では、エルジータさんは、なんとかPCを入手して学校の宿題に追いつこうとしていた。「厳しい時には、農場で穫れた物で凌ぐしかありません。両親は市場で野菜や果物を売って収入を得ています。私は妊産婦医療について勉強していて、若い人達が子供や赤ちゃんの世話をするお手伝いがしたい。」

獣医志望のアデさんは、動物病院の研修医として働いている。家族の主な収入源は農業だという。「でも、東ティモールの問題は農業収入の低さです。政府には、いつかは枯渇する石油収入のみを当てにするのではなく、若者が基本的なニーズを満たせるようにしてもらいたい。」とアデさんは語った。

ユージニアさんとレアオさんの2人も、同じような気持ちを持っている。

「私は、若い女性として、家に留まっているのではなく、どうしたら他の人々を助けることができるのかをいつも考えています。」というユージニアさんは、南バカウ地区の地域センターで若者のための活動に従事している。一方、「土地の生産性を上げるために地域に力をつける必要があります。」というレアオ・カルバルホさんは、栄養問題と若者の市民活動に取り組んでいる。

成人の平均年齢が35歳である東ティモールでは圧倒的に若者が多く、取材した若者たちもすべてが20代だ。

2023年に向けた最新の「統合食料安全保障分類」(IPC)報告によれば、「気候リスクと被害」も子供たちの発育障害の深刻な要因となっているという。2021年4月、東ティモールを巨大サイクロン「セロジャ」が襲い、家屋、サービス、建物、道路が完全に破壊された。これにより、1万3000人以上が家屋を失い、4万4000世帯が影響を受け、50人が死亡した。

他方、最新の統計では156人の死者を出している新型コロナウィルスによって問題は複雑化している。2021年、2万人弱が陽性判定された。

 

減少する石油・ガス収入

「ラオ・ハムトゥク」のチャールズ・シャイナー研究員は、東ティモールが石油や天然ガスといった採掘資源に過度に依存していることを警告する報告書を執筆した。

「東ティモールは、石油・天然ガスの輸出が全体に占める割合では、世界で最も石油資源に依存している国の一つだ。しかし、それは埋蔵量が豊富な石油や天然ガスによるものではなく、単にその他の資源がないからにすぎない。石油・天然ガス輸出からの収入は、この20年間で、国家支出の実に86%を占めている。例えば学校制度を含め、子供達が恩恵を受けている多くの施策が、十分ではなくとも、この原資で賄われている。」とシャイナー氏は語った。

シャイナー氏によると、東ティモールの圧倒的に若い人口は、インドネシアによる占領が21年前に終了してから生まれた世代だ。しかし、そのほとんどが農村に住んでいるため、栄養状態はよくなく、教育・医療も不十分で、雇用の見通しも低い。

東チィモールでは、82万人の労働人口の内、公式経済部門に参入しているのは僅か4分の1で、主に建設や行政、そして首都のディリでは石油・天然ガス関連の仕事に携わっている。しかし人口の大半は農業や漁業の非公式経済部門に従事しているため、石油や天然ガス資源の恩恵をほとんど受けてこなかった。

シャイナー氏は、「中間所得層と富裕層の上位10~15%の人々からすればこの21年で生活はかなり改善しました。しかし、貧困下にある人口の40%超の人々を見れば、生活はほとんど変わっていない。」と語った。

政府支出は、ほとんど公務員の給料か、ディリの政府施設の建設費用に使われ、利益を得ているのは裕福な人々だけだ。公務員は上流階級と見なされている。

しかし、東ティモールのほとんどの人々は自給自足の零細農民であり、彼らのための公共支出は少ない。「財政支出の約半分が、輸入や海外企業に対する公共事業関連の支払いのために、国外に流出してしまっている」とシャイナー氏は指摘した。

「ラオ・ハムトゥク」は自らの調査を通じて、非再生資源が失われつつあると指摘した。投資者が非経済的だと見做すようになると、そうした資源の生産は高価になってくる。230億米ドルを生み出した2005~12年ごろの資源ブームは終わりを迎えてしまった。

現在、同国の国家財政の86%は石油関連収入からきているが、現在のペースで石油や天然ガスの採掘が続くことになると、数年で資源は枯渇してしまう。バユ・ウンダンの主要な採掘場には、もうほとんどまともな資源が残っていない。

「数か月前に試掘された油井が2か所ある。一つは、東ティモール国内の内陸油井で、もう一つは、豪州の小さな企業が経営している海上油井だ。もっと石油が出てくると見られていたが、ふたを開けると商業ベースに乗るものではなかったため、企業は撤退を決意している。」とシャイナー氏は説明した。

他方で、ゴメス氏は、「長年の訴えがあるにも関わらず、子供の発育不良の問題は未解決のままです。政府が適切な財政支出をしていない中、私たちは将来を心配しています。政府が進めている巨大な(インフラ)事業も、この国の社会経済と環境にとってのリスクとなりかねません。」と語った。

「この2、3年の東ティモールは不安定な政治状況下にありました。政府は意思決定の中心に民衆を置くことなく、自分たちの利益ばかりを追求してきたのです。」とゴメス氏は説明した。

ゴメス氏は、まもなく国政選挙が近づく中、ある期待を持っている。「東ティモールの若者たちは、自分たちの現実に理解を示すよい指導者を選ぶだろう。(そうした新)政権が民衆の問題を意思決定の中心に置くならば、子供の発育不良の問題も解決されるだろうし、将来世代の問題に備えることができるだろう。」

東ティモール大統領選は3月19日の投票が予定されている。(02.11.2022) INPS Japan/ IDN-InDepth News

 

NEWSLETTER

STRIVING

MAPTING

PARTNERS

Scroll to Top