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新型コロナウィルス感染症が拡大するなか「二重の脅威」に直面する移民たち

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Photo: Migrants on board a boat headed for Tripoli in July 2019. Critics say the EU should not be helping the Libyan Coast Guard to intercept and return people to a war-torn country where they face abuse and extortion. (Filippo Rossi/TNH)

【バージニアIDN=ジャクリーン・シャルスキ-ファウツ】

移住労働者は、新型コロナウィルスの感染が世界的に広がる中、「エッセンシャルワーカー(=社会にとって必要不可欠な労働者)」として、世界経済の最前線に立ち続けてきた。しかしこれは大きなリスクを伴うもので、彼らは、「国際救援委員会」が「想像を超える二重の緊急事態」と言及しているものに直面している。

紛争や強制退去を経験した移民たちは、世界的なパンデミックだけではなく、経済不況がもたらす影響にも立ち向かっていかなければならない。脆弱な立場にある移民たちは貧困に陥りやすく、紛争や追放の憂き目にあったり、危険な労働環境や厳しい生活環境に追いやられやすい。従って、ホストコミュニテイーで失業が増えれば、移民たちに対する経済支援や法律面での支援、さらには感染から身を守るための個人防護具へのアクセスを支援する必要がある。

米国では、西海岸一帯に広がった山火事で空が赤く染まり、大気が危険な状態になっているなかで、カリフォルニア州のワイン産地であるセントラルバレーの農場では多くの移住労働者たちが働いている。

スペイン・アルメリアの農場では、モロッコからの移住労働者たちが、新型コロナウィルス感染症の拡大を防ぐためのマスクや消毒液といった防護措置がほとんど取られていないことに不満を漏らしていた。

欧州連合(EU)内でスペインは移住労働者の割合が最も高い国の一つである。少なくとも同国の農業の25%が、外国人移民の労働に依存している。同様に、米国の農業労働者の3割と、EUの労働者の390~410万人が不法滞在者である。これらの外国人労働者は各国経済や世界経済で重要な役割を果たしているが、今やパンデミックの危険に正面から晒されている。

移住労働者と同じように、難民や国内避難民についても、パンデミックに伴う経済活動の停止の影響に対して脆弱であり、感染拡大に伴って健康上の懸念が持たれている。

経済活動の停止によって、基本的な生活水準をかろうじて保っていた多くの人々が、失業と、政府から経済支援を得る資格を喪失するリスクに晒されている。

新型コロナウィルス感染症に伴う経済活動の停止で世界中の国々の小規模ビジネスは大打撃を受け、今後「厳しい」経済不況に見舞われると予想されている。結果として、106万人が今年末までに貧困に陥る危険がある。その中には、非正規部門労働者のかなりの部分を占め、こうした危機に「とりわけ脆弱」な移民や難民が含まれている。

最近の研究によると、モロッコの非正規労働者の数は、労働者全体の3分の1以上にあたる約240万人であった。消費者が仕事を失い、企業がより安い商品とサービスを求めるなか、非正規労働者の数は今後も増えていくと予想されている。経済活動が停止していた間は、多くの非正規労働者は、顧客を見つけたり、交通手段がないために職場に行くことができなかった。

モロッコでは、労働市場と民間部門が経済活動の停止によって大きな影響を受けているが、なかでも最も影響を受けたのが非正規部門の労働者で、既に全体の66%が職を失っている。モロッコ政府は、とりわけ非正規労働者に関して収入喪失の影響を緩和しようと努めているが、7月半ば時点で、わずか19%の世帯しか恩恵を受けていない。こうした支援の大半は、移民、とりわけ非正規雇用や不法滞在状態にある者には届かない。

過去の金融危機の事例からも明らかなように、ほとんどの移民は本国に帰らない。むしろ、本国の経済的見通しが暗いことから、多くの人々が欧州に渡るべく北へ向かう。この数か月、チュニジアではイタリアに向う移民が増えて、昨年の6倍に達している。

しかし、旧来の(トルコ-バルカン半島を経由する)陸路での移動ルートが閉鎖されてしまったため、多くの移民がブローカーを通じて(地中海を渡る)海路による密航を選択した結果、今年だけでも675人以上が亡くなっている。

人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、新型コロナウィルスの感染拡大がもたらす複雑な状況について警告している。移住労働者はしばしば危険な労働環境や生活環境に直面しており、その結果、ウィルスに対してより脆弱な立場に立たされている。

2009年の経済不況に際して、ロンドンのブルガリア移民を調査したカヴィタ・ダッタ氏によると、解決策は2つしかないという。一つは移民を減らすこと。もう一つは、その国の中で移民に法的支援を与え、移民に関する理解を促進して、彼らが搾取される可能性を減らすことである。

移民政策センター」が主催したウェビナーでゲストスピーカーを務めた同センターのアンドリュー・ゲデス所長は、移民に関する新たな議論を呼びかけ、責任の共有や法的な道筋といった現在の政策を各国政府が再検討する必要性について語った。

自国を経由して非正規移民の大半を欧州に送り出しているリビアやモロッコといった北アフリカの国々に多くの非難が向けられている。移民を減らす英国政府の計画は、モロッコのような外国に収容所を設置するという内容を盛り込んだ。オーストラリア政府の同様の計画ではパプアニューギニアを利用している。この計画は、国連やその他の人権団体から批判された。

しかし、移民の増加に対して収容所の増設で対処するよりも、法的支援団体や移民支援政策はより人道主義的なアプローチを採用している。その方がより効率的に非正規移民を減らすことができるかもしれない。

権利と正義」のようなモロッコの団体や、フェスのシディ・モハメド・ベンアブドラ大学の学生団体「法学部法律クリニック」(CJFD)はそうした方向を進めている。

CJFDは「米国中東パートナーシップ・イニチアチブ」や「全国民主主義財団」の支援を得て、「ハイアトラス財団」との協力でプロジェクトを実施している。ここでは、法学生たちが、欧州を目指す移民の数を減らす多面的なアプローチの一環として、人権や社会的統合、起業訓練を促進しながら、法的支援を行っている。こうすることで、旧来からの移民送出地を支援の場に変え、定住を促している。

新型コロナウィルス感染症の拡大に対応して、世界中でボランティア活動と地域の連帯が活発化した。これは、移民を保護し受容するプログラムに対する支援を増やす基礎となった。移民送出国は、危険を伴う移動や搾取、あるいは貧困のリスクを抱えた移民の数を減らすために、各国政府と地域で活動する社会団体とをつなぐ動きを強めねばならない。(10.16.2020) INPS Japan/ IDN-InDepthNews

 

 

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