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|タイ|「希望の種」が地域の食料不足解消をめざす

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Image: The offering of seeds to monks. Credit: 'The Royal Initiative Discovery Foundation'.

【カエン・マクルード(タイ)IDN=パッタマ・ビライラート】

種なくしては世界の人びとを食べさせるのに十分な食料安全保障は望めないという信念の下、タイの「希望の種子」(SOH)プロジェクトが、地域に自活的な農法を身につけさせ、収奪的な農業ビジネスから身を守ることを目指している。

タイ北部の低地ウタイターニー県カエン・マクルード村の住民のほとんどがポー・カレン民族であり、彼らの文化や伝統は種子と密接に結びついている。

この地域の習俗に詳しいワノブ・コルスクさんは、「私たちの食料は種に由来しており、地域の様々な儀式で、客人や村の長老たちに種が提供されます。例えば、炊いた米に豆やゴマと混ぜた伝統料理『ミーシ』が、結婚式などの儀式に出席する客人らに振舞われます。また、重要な儀式として、種をお供え物として僧に捧げるのです。」と語った。

地元の僧に種を捧げるという行為はタイの仏教文化に根差したものであり、僧侶はお経を唱え祈りを捧げたのちに、供物の種を村人たちに配布している。「そうすることで、村人たちは様々な種を手にして、土地に蒔くことができるのです。」と、コルスクさんは語った。

種と地域社会のつながりを維持するために、コルクスさんは現代の農業技術が種子の絶滅につながることを深く憂慮している。

遺伝子組み換え作物(GMO)のような不自然な品種を開発し、世界の食糧を掌握しようとする巨大企業があるため、村人が種をまく場合、企業から買わなければならず、純粋な品種を育てる機会がなくなっていることは知っています。たしかにこうした企業が提供する品種は、成長が早く、繁殖力が強く、見た目も良い果物が収穫できます。そのため、農家は常に購入者の立場に立たされることになるのです。」とコルスクさんは指摘した。

「その結果、自然界の植生が急速に失われています。私も以前は企業から種を購入し、タピオカのみを植えていたのですが、2016年になって土地が干上がってしまい、作物が植えられなくなったのです。どうしたら家族を食べさせることができるか途方にくれました。」とコルスクさんはIDNの取材に対して語った。

そんな時、あるテレビ番組で自活的で持続可能な農業について知った。前国王のプーミポン・アドゥンヤデート(ラーマ9世)が始めた取り組みであった。「当時の私は、自分の農業のやり方を持続可能なものにしようと必死でした。偶然、私の住む地域にあるロイヤル・イニシアチブ・ディスカバリー財団のスタッフに、自分の考えと窮状について話す機会があり、彼は私の状況を理解し、私の思っていることを実現する手立てを与えてくれたのです。」

自活的な農業について教育する「プンプン・センター」は、この地球上で1日あたり少なくとも20種の作物が失われていると推定している。かつて世界には約2万種近い米があったが、現在では200種にも満たない。同センターによると、種子の消滅は、人間にとっても動物にとっても食料の安全保障を失うことになるという。

IDNは「知識管理財団」(KMF)のハタイラート・プアングチョエイ代表に取材をし、自活的で持続可能な農業の理論をどう実践していったらよいかについて聞いた。

「国王が提示した原則を取り込んで農村の発展を加速・拡大させていくことが私たちの使命です。」とプアングチョエイ代表は語った。同財団はタイ全土の地域社会や自治体、学術組織と協力してプロジェクトを実践している。

「かつてカエン・マクルード村はファイ・カーエン野生保護区の緩衝地帯としても機能していたため、村人達は保護区を侵食していたのです。この村にスタッフを常駐させ、代替の仕事を作っていますが、それは、この土地に灌漑システムがうまく機能するようになってからでしょう。」

KMFは、コルスクさんが持続可能で自立した農業を実現するために、手を貸すことを惜しまなかった。他の村人たちとともに、アグリネイチャー・ファウンデーションが運営するコースに参加させたのだ。「交通費、宿泊費、食費は財団が負担しました。そしてコース終了後、コルスクさんはすぐに持続可能な農業を始め、最初にやったことは、財団のネットワークの支援で自分の土地に水路を作ることでした。」とプアングチョエイ代表は語った。

彼女は、「KMFが支援してきた持続可能な開発手法は、コロナ禍のような苦難の時代にも役立っています。このコンセプトのもとで栽培された農作物は、地元の人々の80%を養うことができたのです。」と語った。

「ロックダウンが発表されていた時期、私の畑には十分な数のザボンがありました。それで、村の内外の人に、私の畑に来て果物を好きに持って行ってくれていいと言いました。コロナ患者を世話する看護師たちへの感謝を込めて、果物を配ったこともありました。」と、コルスクさんはIDNの取材に対して語った。

プアングチョエイ代表はさらに、財団には、村が自活していくために3点のプログラムを実施していると説明した。つまり第一に、自らの家族をその作物によって食べさせること、第二に、地元の住民らがお互いに助け合うこと、第三に地元のネットワークが外部組織と協力して収入を増やしていくことである。

カエン・マクルード村は現在、「ロイ・プン・ルクサ地域公社」という種子を生産する企業を2019年に設立するなどプロジェクトの第三段階に入っている。「コミュニティのメンバーが種子保存に熱心であることに気づいたので、2017年にチェンマイで種子保存コースを受講してもらいました。それから村人らは自ら種を生産し、新たな植生について学び、カエン・マクルード村で100種類以上の種子を発見しました。」とプアングチョエイ代表は語った。

カエン・マクルード村が食料不足解消のためにいかに種を発見していったかについて、「ロイ・プン・ルクサ地域公社」(RPRCE)のディレク・スリスワン会長がIDNの取材に答えた。

「私はカエン・マクルード村のカレン族の学校の校長をしていましたが、村人が野菜や果物の種を買ってきて植えているのを見て、長期的には業者に頼らざるを得なくなると考え、学校の土地で土着の野菜を栽培することを教え始めました。『足るを知る経済』のアプローチと持続可能な農業の知識を教え込みました。」とスリスワン会長は語った。

のちに村人たちは村の公社に加わって、他県の村へとネットワークを拡大し種の確保や作物生産の知識を蓄えていった。

RPRCEを設立してから、「私たちは、ハーブもしくは野菜のような新たな作物を調べるための経済的な支援をしてくれる『生物多様性基盤経済開発局』とつながりを持ちました。私たちの目的は、地域とネットワーク内での食料不足を解消することだけではなく、農民やその他の地域、外部機関の間で地元の種の保存に関する知識を拡散し経験の交流を図ることでした。」とスリスワン会長は説明した。

「希望の種」は1月21・22両日に自分たちの活動を説明するイベントを開催した。スリスワン会長によると200人以上が参加したという。

カエン・マクルード村から35キロ離れたナコーン・サワン県からの参加者、ユラさんはIDNの取材に対して、「初めて来たのですが、『アグリネイチャー』の活動にとても感動しました。人々が協力し合って働いていること、土地や種子を保存する方法がとても多様であることを知りました。こういうやり方はこれまでに見たことがなく素晴らしいと思います。このコミュニティは小さいですが、『希望の種』はとてもうまく運営されていて、連帯感があります。」と語った。

「多様な種を見たいと思ってここに来たのですが、期待以上でした。またここに来て、次はオーガナイザーとして参加したいと思います。このイベントで学んだことを私やその近隣の地域の人々に紹介します。ナコーン・サワン県でも協力して物事を進めてはいますが、これほど固い連帯はありません。」とユラさんは語った。

もう一人の参加者、マミューさんは、「まさか『希望の種』にこれほど多くの参加者が集まるとは思っていませんでした。カエン・マクルート村のコミュニティの団結力が、このイベントの推進に役立っているのだと思います。新しい世代には、私たちの文化を守り、伝え、身近な価値観を知ってほしい。これらは、彼らが自立するために必要な要素なのです。」

プアングチョエイ代表は、彼女らの活動は「社会的実験」であると考えており、世界の潮流の変化や、気候変動による天候の変化が伝統的な栽培に影響を与えつつある中で、伝統的な農法が変化する可能性を自覚している。

「しかし、種を変異させることなく、遺伝子組み換え作物に頼らずに生産性を上げる方法を模索しなければなりません。」と、彼女は決然とした表情で指摘した。「成功が他者にとっての学びの源泉となるようなものとして、この場所を使っていきたい。だから私たちはこれを『社会的実験』と呼んでいるのです。」(02.01.2023) INPS Japan/ IDN-InDepthNews

 

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