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Photo: Mario Marazziti, co-founder of the World Coalition Against the Death Penalty in 2002 and Member of the Italian Chamber of Deputies. Credit: Katsuhiro Asagiri | INPS-IDN Multimedia Director.

|日本|ローマ教皇の来訪を機会に死刑制度を巡る議論が再燃

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Photo: Mario Marazziti, co-founder of the World Coalition Against the Death Penalty in 2002 and Member of the Italian Chamber of Deputies. Credit: Katsuhiro Asagiri | INPS-IDN Multimedia Director.【東京IDN=浅霧勝浩】

「いのちなきところ正義なし〜日本の死刑制度の今後について〜」と題した国際シンポジウム」が開かれ、日本政府に対してオリンピックが開催される2020年に一切の死刑執行を停止する呼びかけがなされた。日本は死刑制度を維持している56カ国の一つである。また先進国(=OECD加盟36カ国)の中では死刑制度を維持しているのは米国と日本と韓国のみである。

この国際シンポジウムは、23日から4日間にわたり日本滞在するローマ教皇フランシスコの到着を前に、来訪のテーマである「いかなる状況においてもすべての生命と人間の尊厳を守ることを中心に据える」を支持する意味合いを込めて、22日に開催された。

死刑廃止世界連盟共同設立者で聖エジディオ共同体のマリオ・マラッツィーティ氏は、フランシスコ教皇の訪日が、日本に死刑制度について再考する契機となることを希望すると語った。

聖エジディオ共同体は、カトリック教会と現代社会の関係を協議した第二バチカン公会議直後の1968年、当時高校生だったアンドレア・リッカルディ氏とその仲間たちによってローマの高校で設立されたカトリックのコミュニティーである。その後共同体は大きく成長し、現在、70カ国以上にひろがっている。

聖エジディオ共同体は、社会の周辺に追いやられた人々に寄り添い、年齢や生活環境に関わらず、福音に耳を傾け貧しき人々と平和のために自主的で無償の支援を差し伸べる兄弟愛で団結した人々が集っている。

死刑制度に断固反対の立場のマラツィティ氏は、「罪を犯した人の命を奪っても、死がさらに増えるだけであり、新たな犠牲者を生みます。」と語った。「犠牲者の家族はしばしば、死刑が『正義』を施し『苦痛からの癒し』を約束するという『嘘』をつかれているのです。

このようなものの見方が、日本人の大半は死刑制度の継続に好意的、という世論調査の結果に反映されています。」「しかし現実には『恨みを固定し、復讐の時を窺う人生へと人々を置き去りにします。』と、死刑制度廃止に専念するイタリア人ジャーナリストでもあるマラッツィティ氏は語った。

オリンピックが開催される2020年に一切の死刑執行を停止するというマラツイッティ氏の提案は、駐日イタリア大使館、日本の死刑制度の今後を考える議員の会、日本弁護士連合会など幅広い支持を得た。この国際シンポジウムは、生命山シュバイツァー寺、創価学会平和委員会の協力を得て衆議院議員会館で開かれた。

「いのちなきところ正義なし」という国際シンポジウムのテーマは、死刑が確定している袴田巌(83歳)さんと姉の秀子(86歳)さんが参加したことで一層強調されることとなった。袴田氏は、日本で死刑制度に反対する運動の象徴的な存在となっている。

死刑囚として収監中にカトリック教徒に改宗した袴田氏は、姉とともにフランシスコ教皇が主宰するミサに参加した。2014年に、静岡地裁は、DNA鑑定により犯人の血液と一致しないとして袴田巌氏を釈放した。しかし昨年、東京高等裁判所はDNA型鑑定を信用できないとして 静岡地裁の決定を取り消した。現在、審議は最高裁に持ち込まれている。

袴田氏の支援者や弁護士らは、同氏は「人質司法」として知られるようになった自白強要を偏重する日本の刑事司法制度の被害者だと述べている。

袴田氏は、一旦は殺人を自白したが、初公判で全面否認に転じた後は一貫して無罪を主張し続けた。公文書によると、袴田氏は弁護士の立ち合いを許されないまま連日10時間以上にわたり警察の尋問、殴打、虐待に晒された。彼は味噌製造会社の上司と妻、2人の子どもが殺害された1966年の事件の犯人として起訴され、1968年に死刑判決を受けた。

AP通信の報道によると、当時袴田氏の死刑判決に関与した裁判官の一人は、後にこの事件について当初から疑念を拭いきれなかったと認めている。警察は証拠として味噌タンクの中で発見された血染めの衣類を提出したが、その味噌タンクは以前に警察が徹底的に捜索していたものだった。

この裁判官は(無実の心証を持ちながら死刑判決文を書いた)罪の意識から自殺未遂を図っている。のちにキリスト教に改宗し、袴田氏と同じ洗礼名パウロに日本人殉教者三木の名を加えたパウロ三木を名乗った。また、プロボクシング協会も(元プロボクサーの)袴田氏を支援する意向を表明している。

「毎晩9時から10時半までイエス・キリストに祈りを捧げ、無罪を訴えています。この祈りの時間、私は苦しみから解放されて自由になれます。神の愛と祝福のお陰で私はここに存在し真実を叫び明日に向かって歩くことができます。」と袴田氏は獄中で記している。

袴田氏の姉秀子さんは、シンポジウムの参加者らに向かって、「弟はあまりにも長い間、死刑囚として過ごしてきました。今も死刑囚のままです。」「よくぞ元気で出てきたと、私は喜んでいます。でも、拘留時のトラウマから妄想を引き起こす傾向があり、まだ全然まともではありません。」と声を詰まらせながら語った。

国際シンポジウムでは、袴田氏の再審請求などに携わる弁護士らからは、「人権上、国家が国民の命を奪うことは許されるのか。」「一旦死刑が執行されれば、取り返しがつかない。冤罪で処刑された人を生き返らせることはできない。」など、死刑制度への批判が次々と上がった。

日本の死刑制度の今後を考える議員の会会長の河村健夫元官房長官は、「死刑制度が維持されている背景には国民の根強い肯定論があるが、冤罪の可能性から廃止の声も上がっている。改めて国民的議論を喚起する必要がある。」と語った。

この国際シンポジウムが、フランシスコ教皇の訪日の前日に開催されたことは、教皇フランシスコが、昨年、死刑は「許容できない」と述べ、『カトリック教会のカテキズム』中の、死刑に関する記載変更を承認した事実を想起させる狙いがあった。

獄中でカトリックの洗礼を受けた袴田氏はフランシスコ教皇が執り行う東京ドームでのミサに招待され、姉とともに参列した。しかし教皇の謁見は叶わなかった。フランシスコ教皇は、「袴田氏の事件については後ほど知った。」と述べている。

しかしフランシスコ教皇は、東京からバチカンに戻る特別機の中で開いた記者会見で、25日に行った安倍晋三首相との会談で死刑問題についても(多くの議題の一部として)言及したと語った。

共同通信によると、フランシスコ教皇は、死刑問題について「(世界での死刑廃止へ)少しずつ取り組んでいかねばならない。」と述べ、進展には時間がかかるとの見方を示した。

フランシスコ教皇は世界で初めて原爆が投下された広島と長崎も訪問した。この点について、東京からバチカンに戻る特別機の中で開いた記者会見で、「広島での経験は心を動かされた。」と語った。広島では被爆者と言葉を交わし証言に耳を傾けた。そして、カトリックの教えの中で核兵器の使用と保有が倫理に反すると明記することを明らかにした。

NHKワールドの報道によると、フランシスコ教皇はまた、「(個人的な意見だが)完全に安全性が確認されるまでは原子力は利用しない」と語った。(11.30.2019) INPS Japan/ IDN-InDepth News

 

 

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