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Colombian Amazon. Credit: Indigenous organization OPIAC

コロンビア和平協定の陰にある環境リスク

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Colombian Amazon. Credit: Indigenous organization OPIAC【カルタヘナ(コロンビア)IDN=ファビオラ・オルティス】

2016年11月に署名され12月初めにコロンビア議会が批准したコロンビア革命軍(FARC)との和平協定は、半世紀に及んだ紛争を終わらせたが、環境にとっては脅威になっているという。カルタヘナで7月23日から27日にかけて行われた国際生物保護会議(ICCB2017)で科学者や専門家らがそうした議論を行った。

この世界的なフォーラムには約2000人の科学者が集まり、生態系の問題に対応し、保存科学や持続可能な実践におけるあらたな研究が提示された。

人口4000万人のコロンビアには、2300万ヘクタールにも及ぶ59の国立公園やその他の保護地区があり、世界の生物多様性の10%が集中する世界で最も生物種が豊富な17カ国のうちの一つとなっている。

熱帯雨林が専門でクイーンズランド大学の博士研究員でもある生物学者のパブロ・ネグレット氏は、IDNの取材に対して、「コロンビアにおける環境保護に関する決定については、紛争後のシナリオを考慮に入れたものに改善していく必要があります。」と語った。

「私たちは史上最も長い紛争の一つを経験し、多くの領域がゲリラの支配下にあって孤立してきました。武装集団が行動していた地域は、長年にわたって開発事業の恩恵を受けてきませんでした。しかし、紛争が終結し和平協定が結ばれた今日、武装解除の過程にある FARCから解放された地域には別の集団が支配を広めつつあります。」

「危険があるのはまさにこの点です。」と専門家らは警告している。以前は国土の3分の1が反乱軍によって支配されていたが、解放された今、広大な未開発の土地に眠る豊かな天然資源を求めて新規参入者や経済的利害関係者に対して道が開かれてしまったからだ。

「多くの地域が、採鉱や石油掘削、粗放農業といった開発事業に対して開放されました。とりわけ、アマゾニアン・ピードモントにおいては森林破壊の度合いが増しています。」と、ネグレット氏は警告した。

アマゾニアン・ピードモントは、プトゥマヨカケタ両県にあり、コロンビア南西部のアマゾン川流域とアンデス山脈の交わるあたりにある丘陵地帯のことである。生物の保存と研究にとっては関心を呼ぶ、多様性のレベルが非常に高い場所だ。アマゾン川はこの丘陵地帯に発して、900以上の鳥類、数百種以上の哺乳類、爬虫類、両生類が生息する深い森を通って、低地へ流れている。

「土地の現状回復に関しても大きな期待があります。政府は、コカのような違法作物を別の作物に置き換える意思のある家族に対して経済的な支援をする予定です。そこで多くの入植者や農民がそうした地域を目指し、支援を受けるために森を切り開いて、あえてコカの栽培を始めるケースが出てきました。」

こうした動きによって、アマゾンの森林破壊は加速度を増している。コロンビアの「水文地質学・気象学・環境研究所」によると、最新の調査における森林破壊率は34%に上っていた。

紛争後のコロンビアで環境を脅かすリスクについてネグレット氏に尋ねたところ、大きな脅威は、土地分配や(この地域の天然資源を求める)新規参入者対策に関する厳密な計画が存在しないことだという。結果として、生物多様性が豊かな地域を手つかずのままに残すことが困難になっている。

「生物多様性のレベルが高い多くの地域が破壊されてしまうかもしれません。」とネグレット氏は警告する。「開発計画や道路建設が実施された段階で生物多様性が壊れないようにするために、生態学的な特徴を考慮に入れた紛争後の地域を優先する計画を策定すべきです。例えば、採鉱よりもずっと経済的に見返りの高い利益をもたらすことができる、生態系サービスを確立するといったオルタナティブについて考えるべきです。」

ネグレット氏によると、コロンビアの開発は、保護区域を拡大して、すでに国立公園化しているところでは熱帯雨林の破壊を防ぐ保護政策に焦点を当てるべきだという。「私たちは、保護区域、とりわけFARC以外の武装集団が依然として存在している地域の管理をもっと厳格にする必要があります。」と、ネグレット氏は訴えた。

「これは潮の変わり目です。人々は戦争状態の中でこれ以上暮らしたくないと思っているのです。FARCとの和平プロセスは他の集団が武装解除に応じるよい模範になるかもしれません。今まさに変化の兆しが訪れているのです。」

歴史的な瞬間だった。6月27日、FARCの元戦闘員らが、国連と450人の国際監視人が見つめる中、7000丁以上の銃火器等の武器を放棄したのだ。

「国際社会が、和平プロセスと我が国の環境目標を支持するのを待ち望んでいます。」「私たちは、環境目標を、和平プロセスの履行という文脈の中に埋め込んでいかなくてはなりません。私たちには、新しい時代の難題に対応する政策と機構改革があります。」とコロンビアのルイス・ムリージョ環境・持続可能な開発相は語った。

国際生物保護会議で記者会見を開いたムリージョ大臣は、「和平が実現したことで国を開発していくための資源動員が可能になりました。しかし私たちはこの国の生物多様性についてほとんど知りません。和平プロセスが開始されたことで、生物多様性が豊かな地域に行くことができるようになりました。コロンビア政府は現在、生態系を守りつつ、同時に、地域や国全体の経済発展に資する天然資源の現状を把握し、その使い方を自覚する『バイオ経済』という概念に基づく開発指針の基盤作りを進めています。」と語った。

しかし他方で、和平合意に全ての人々が同意したわけではない。和平交渉から先住民族が取り残されたとの不満の声も強い。和平プロセスの結果として制定された30本の法律のうち、先住民に関連する法律は、彼ら環境への貢献に対する支払いを定めた1本に過ぎない。

1995年に創設された「コロンビア・アマゾン先住民族全国組織」(OPIAC)のコーディネーターであるマテオ・エストラーダ氏はIDNの取材に対して、「これは全く不十分と言わざるを得ません。先住民族は、この紛争に間接的に関与し犠牲を強いられてきたにもかからわず、和平交渉は政府とゲリラとの間のみで行われ、社会の大部分は排除されたのです。」と語った。

コロンビアの105の先住民族のうち、56がアマゾン地域に住んでいる。その全人口は12万人で、全国土の3300万ヘクタールの先住民族の土地のうち、2900万ヘクタールに住んでいる。つまり、先住民族の土地のほぼ9割がアマゾンにあるということだ。

「私たち先住民が保護している地域はゲリラによる影響を受けてきました。私たちは、狩猟や漁をはじめ行動の自由を奪われるなど、ゲリラから多くの規制を課され、一部の先住民族にいたっては強制的に動員されもしました。(和平合意でゲリラが去った今日)私たちが抱える環境問題について政府と対話の機会が設けられることを望んでいます。」

コロンビアの先住民族らは、アマゾン地域に対する明確な環境政策の策定を政府に求めるための具体的な提案を提示するために、彼らが直面している脅威(森林伐採、採鉱、土壌汚染等)と生物多様性を保全するための代替え案(オルタナティブ)を特定しようとしている。

「私たちは、これまでアマゾン地域に対する特定の政策や特別の規制枠組みが存在しなかったために、様々な被害に苦しんできました。今こそ、和平プロセスの枠組みのなかで、こうした新しい政策を描くべき時です。しかし、これまでのところ政府は本気でそのような取り組みをする意志を見せていません。私たちは、アマゾン地域に対する適切な政策が打ち立てられることを切に望んでいます。」とエストラーダ氏は強調した。(07.31.2017) INPS Japan/ IDN-InDepth News 

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