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リスボン国連海洋会議で多くの公約

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Image: The Red Sea's reef is one of the longest continuous living reefs in the world. © Unsplash/Francesco Ungaro

【ベルリン/リスボンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

国連開発計画(UNDP)は、持続可能で低排出、気候変動に強い海洋関連行動を2030年までに実行することで、すべての小規模島嶼開発途上国の「ブルーエコノミー」の可能性を最大限に引き出し、100カ国にも及ぶ沿岸諸国を支援するとの公約を行った。

この公約は、ポルトガルの首都リスボンで7月1日まで5日間にわたり開催された「第2回国連海洋会議」でなされた。海洋経済国に対する政府開発援助(ODA)がこの10年間で年間平均わずか13億ドルであったことを考えると、きわめて重要な公約だ。しかし、海洋の回復や保護に対する官民の投資はきわめて不適切なレベルにとどまっている。

UNDPが6月28日に出した「海の約束」は、パリ気候協定の達成に1ペニーを投資するごとに、持続可能 なブルーエコノミーの基盤である海の健康に1ペニーを投資できることを強調するものである。「約束」は、経済成長を加速させ、雇用と生活を生み出し、食料安全保障を改善し、貧困と不平等を削減し、ジェンダー平等を促進するために主要部門でなしうる行動について示している。

「『海の約束』は、海洋の不適切な管理による年間1兆ドル近い社会経済的損失の回復に重点を置いた、私たちのブルーエコノミーのビジョンです。この約束は、海洋に関連した社会経済的機会を促進するために新興海洋部門への投資を進めるよう諸国に促すものです。」と国連事務次長兼 UNDP 副総裁のウシャ・ラオ=モナリ氏は語った。

「私たちは、持続可能な開発目標(SDGs)第14目標項目の実現に向けて、各国政府、国連機関パートナー、政府間組織、NGO、コミュニティー、民間セクターと緊密に連携し、地域からグローバルまで、課題や 規模を越えた活動を続けていきます。海洋は、気候変動の影響を緩和する死活的な存在であり、海洋を守ることは私たちの未来を守ることです。」

UNDPが指摘するように、SDGs第14目標は最も投資がなされていない目標であるが、地球の三重の危機に対処するうえでのゲーム・チェンジャーになる可能性を秘めている。これまでどおりの化石燃料使用シナリオでは、多くの海洋の種や生態系、それに数十億人の食料安全保障と生活が、生存の危機に晒されてしまう。2030年まであとわずか8年、行動するなら今だ。UNDPの「海の約束」はSDGs第14目標の大きな進展を促すことを目的としたものである。

今回の国連海洋会議(6月27日~7月1日)には、150カ国以上から24名の首脳を含む6000名以上の参加者と、2000名以上の市民社会の代表が出席し、海の危機に立ち向かうための緊急かつ具体的な行動を提唱した。彼らは、海洋の緊急事態に対処するために、科学に基づく革新的な行動を拡大することを決議した。

若者、市民社会、企業、科学界などあらゆる部門からの大胆な公約とあわせ、今回の合意は、食糧安全保障、生活、安全な地球にとって、安全で健全かつ生産的な海洋が重要であることを明確に示していると、国連情報当局は指摘した。

ミゲル・デ・セルパ・ソアレス国連法務担当事務次長兼国連法律顧問は閉会の挨拶で、「今回の会議は大きな成功を収めました。重要な問題に光を当て、新しいアイディアや公約が生み出されました。しかし同時に、まだ残された仕事にも焦点が当たり、海の回復に向けて、活動を拡大し目標を大きく掲げることの必要性も示されました。」と語った。

海面上昇や海洋汚染、海洋酸性化や生息地の消失など、地球最大の生物多様性の宝庫である海洋が危機に瀕しており、水中生物に関するグローバルな行動の主要なロードマップであるSDGs第14目標の進展が妨げられようとしている。さらに、この地球の「肺臓」とも言える海洋には、人類による累積的な影響が及ぶ脅威もある。もしそれを緩和することができなれば、気候変動は悪化し、パリ合意の目標達成の妨げになるだろう。

海洋を基礎とした経済はコロナ禍によって大きな影響を受けており、海洋の管理・監視・科学は大きく後退している。食料・エネルギー・金融をめぐる多次元的な危機がこの状況をさらに悪化させ、人々の対応能力を奪っている。

しかし、海洋の健全性を回復することは、その解決策の一部となり得る。回復力のある健全な海は、気候変動対策と持続可能な開発の基礎であり、何十億もの人々に食糧とエネルギーを供給する可能性が秘められている。

また、この会議では、ステークホルダーが協力して持続可能な海洋経済へ移行し、その結果、生物多様性やコミュニティーの生活、気候変動への耐性を改善できることを示す、多くの成功事例が紹介された。

さらに、今回の会議では、多くの国々やステークホルダーが新たな公約を多数行い、理念を行動に移すことに成功した。700件近い公約が登録され、2017年の第1回国連海洋会議でなされた実質的な公約に追加された。これらの公約は、海洋を活性化させるためのイノベーションと科学の重要な必要性を示している。

2022年―海にとって最も重要な年

2022年は、海洋会議が海洋関連アクションに新たな1ページをもたらし、海洋にとってひときわ重要な年となった。3月に開催された国連環境会議は、プラスチック汚染をなくすための拘束力のある世界条約の交渉を開始することが合意された。

国連によると、昨月、世界貿易機関が有害な漁業に対する補助金の禁止で合意したという。今年の「国家管轄権を超える海洋生物多様性の領域に関する政府間会議」もまた、公海のガバナンスの強化につなげうる。加えて、今年後半に開催される「生物多様性条約第15回締約国会議」(COP15)は、2030年までに地球上の陸上と海洋の30%を保護するための新たな目標を達成する機会を提供するだろう。11月の「国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議」でもまた、海洋の強靭さを生み出すために必要な気候変動対策と資金調達について、焦点が当てられることになるだろう。

政治的宣言

また、この会議では、海洋緊急事態の壊滅的な影響の最前線にある開発途上国、特に小島嶼国や後発開発途上国が直面する能力的な課題を考慮し、科学に基づく革新的な一連のアクションであるリスボン宣言が全会一致で採択された。

イノベーションと実践を共有していく上で先住民族の果たす役割を認識しつつ、データ収集の強化から、国際海洋運輸、とりわけ船舶輸送からの温暖効果ガスの排出抑制に到るまで、幅広い行動に各国は合意した。また、持続可能な海洋型経済を実現するための革新的な資金調達ソリューションを推進し、女性と女児の海洋型経済への有意義な参加を奨励することでも合意した。

国連経済社会問題担当事務次長で今回の会議の事務局長でもある劉振民氏は、「今後、海洋行動への焦点を新たにすることが重要になります。私たちは、意思決定の科学的根拠の改善に焦点を当て、科学と政策のつながりを改善し、相互学習を通じて能力を高める科学的パートナーシップに関与することによって、これを行う必要があります。」と、語った。

 

自発的公約のまとめ

投資

  • 「私たちの地球を守れチャレンジ」では、海洋保護区域を設定・拡大・管理し、先住民族あるいは地元民が管理する海洋・沿岸地域を守るために、2030年までに少なくとも10億ドルを支出する。
  • 欧州投資銀行は、「クリーン海洋イニシアチブ」の一環として、気候の柔軟性、水源管理、固形廃棄物の処理を改善するために、カリブ地域諸国に対して追加で1億5000万ユーロを投資する。
  • 「グローバル環境ファシリティ」は、コロンビアの海洋保護区域設定に向けて2500万ドルの補助金支出を承認した。
  • 「ラテンアメリカ開発銀行」は、同地域の海洋環境を改善するプロジェクトのために自発的に12億ドルを支出すると発表した。
  • 「海洋リスク・強靭化行動同盟」は、沿岸地域の強靭さを生み出し、金融・保険商品を通じてこれへの資金調達を行う次世代のプロジェクトに対して、世界全体で数百万ドルを支出すると発表した。

海洋保護区域及び汚染

  • ポルトガルは、2030年までに、自国の主権あるいは管轄下にある海洋領域全体と国の海洋領域の3割を、「良好な環境状態」に置くようにすると公約した。
  • ケニアは、包摂的で、利害関係者のニーズを考慮した、全国ブルーエコノミー戦略計画を現在策定している。また同国は、海洋におけるプラスチックごみに関する国家行動計画の策定も約束している。
  • インドは「沿岸クリーン海洋キャンペーン」を実行するとし、ビニール袋などの使い捨てプラスチックの使用を禁止すると公約した。

科学とイノベーション

  • スウェーデンは、SDGs第14目標3項の達成を支援すべく、「持続可能な開発に向けた国連海洋科学の10年」を実施する国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)に対して2022年に40万ドルを提供するなど、科学協力の強化を支援する。
  • 「小規模島嶼開発途上国同盟」は、「小規模島嶼途上国に対する海洋科学知見・研究能力の強化、海洋技術の移転の促進に向けた宣言」を行った。

気候関連アクション

  • 米国とノルウェーは、COP27に向けた「グリーン海洋輸送チャレンジ」を発表した。
  • シンガポールもまたグリーン海洋輸送の促進に力を入れている。海運会社に温暖効果ガス排出の記録化を促し、低炭素海洋燃料に関する研究を進める。
  • チリは、炭素ゼロ海洋輸送を達成するために「緑の回廊」ネットワークを発展させる専門のセンターと協力する。(07.02.2022) INPS Japan/ IDN-InDepth News

 

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