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|視点|トランプ・ドクトリンの背景にある人種差別主義と例外主義(ジョン・スケールズ・アベリー理論物理学者・平和活動家)

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Photo: Lorie Shaull/Flickr – Xena Goldman, Cadex Herrera, Greta McLain, Niko Alexander and Pablo Hernandez (artists)【コペンハーゲンIDN=ジョン・スケールズ・アベリー】

最近発表されたある本(無料ダウンロード可)によれば、過度の経済的不平等を除去することで社会はより良く幸福になるという否定しようのない証拠があるという。

歴史を遡れば、「理性の時代」あるいは「啓蒙の時代」は、17世紀から19世紀にかけて世界の理念を支配した思想運動であった。アイザック・ニュートン卿はさまざまな物理現象(リンゴの落ち方も、惑星や彗星の運行)も同じ法則を用いて合理的に説明し、理性が迷信に勝ることを示した。

ディドロの『百科全書』とヴォルテールルソーの著書は、世界全体において、封建時代の終わり、王権神授説の終わり、農奴と奴隷の解放への道を開いた。

英国では、ジョン・ロックが次のように時代の精神を表現した。「人々が理性に従ってともに生活しながら、しかも、彼らの間を裁く権威を備えた共通の上位者を地上にもたない場合、これこそが、まさしく自然状態にほかならない。…それはまた平等な状態でもあり、そこでは権力と支配権はすべて互恵的であって、他人よりも多く持つ者は一人もいない。なぜなら、同じ種、同じ等級の被造物は、分けへだてなく生をうけ、自然の恵みを等しく享受し、同じ能力を行使するからである。すべての者が相互に平等であって、従属や服従はありえないということは何よりも明瞭だからである。」

「しかし、これは自由の状態ではあっても、思いのままに振る舞える状態ではない……自然状態には、これを支配する自然法があり、何人もそれに従わねばならぬ。この法たる理性は、それに聞こうとしさえするならば、すべての人類に、一切は平等かつ独立であるから、何人も他人の生命、健康、自由または財産を傷つけるべきではない、ということを教えるのである。」

ロックの考え方は、アメリカ独立宣言の文言にも反映されている。

「われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。」

残念ながら、これらの理想は今日の米国において実現されていないし、おそらくこれまでも実現されたことはないだろう。南北戦争を経て奴隷制の時代は終わり、公民権運動の努力はあったものの、今日でも人種差別は広範にみられる。事実、ドナルド・トランプ大統領は、明白に人種差別主義的な公約によって当選している。トランプ大統領は、就任以来、言動共に人種差別的である。

最近では、黒人のジョージ・フロイド氏が警官によって無意味に殺害されたことへの抗議で、米国の多くの都市が揺れている。国は深く分断されている。

 

人種差別主義、植民地主義、例外主義

諸国やその市民の大多数が、虐待や殺人、虐殺などの考えうる限り最悪の罪を犯しながら、それが高潔かつ望ましいことだと感じることはありる。それがいかにして可能かということは、英国放送協会(BBC)によるドキュメンタリー「人種差別の歴史3部作()()」を見れば理解できよう。

この番組は「BBC4」が2007年3月に放映したもので、映像はインターネットでも視聴できる。この目を見開かせるような番組は、人種差別と植民地主義との関係についての洞察を示してくれている。また、人種差別と植民地主義がいかにして米国の例外主義と新植民地主義に結びついているかを見て取ることも可能だろう。

このBBCのドキュメンタリーを見ることで、経済的な貪欲と植民地主義的な搾取が、いかに人種差別的な理論によって正当化されてきたかを見ることができる。ドキュメンタリーは、ヨーロッパ人がアメリカの先住民たちとアフリカ人に対して行ってきた信じがたい虐待について描写している。

たとえば、ベルギー国王のレオポルド2世が広大な土地を自らの私有地と主張したコンゴにおいては、村々の女たちは人質に取られ、男たちは森で強制的にゴム採取に従事させられた。人びとはこうした状況下では食べ物を作ることができないため、当然の結果として飢餓が発生した。

レオポルド2世の9万人の私兵には武器と弾薬が支給され、適切に使用するよう命じられていた。犠牲者の手は叩き切られ、弾薬を無駄遣いしていないことを証明するために送り返されたという。人間の手が一種の通貨となり、ゴム採取の割当量が満たされないときは、男であれ女であれ子どもであれ、生きた人間の手が切り落とされた。時には、わずか1日で1000個以上の人間の手が集められた。レオポルド2世治世下において、およそ1000万人のコンゴ人が殺された。実に、この地域の人口の約半数であった。

 

寡頭制と戦争

今日、世界はおよそ2兆ドル(約215兆円)を毎年軍事支出に費やしている。

この想像を絶するほどの多額のお金の流れは、戦争機構を駆動する「悪魔の発電機」である。政治家は、この莫大な額のほんの一部で買収できることで有名だ。こうして民主主義は腐敗する。軍備に浪費されているこのほとんど信じがたい額のお金を建設的に使うことができれば、人類が直面している緊急の課題のほとんどが解決しうることも明白だ。

世界が毎年約2兆ドルを軍備に費やしているということは、非常に多くの人々がそれによって生計を立てているということでもある。戦争は人類に多大な苦しみをもたらす原因であり、全てを破壊する核戦争の脅威の下に私たちが生きていることを理解しているにも関わらず、戦争が続くのはこうした理由からだ。だからこそ、戦争をひとつの機構として語ることが正しいと言える。

軍産複合体の富裕な少数者たちからのお金が、マスメディアのプロパガンダと政治家の票を買うために使われる。プロパガンダの量に圧倒された市民たちは、恥ずかしげもなく膨れ上がった軍事予算を政治家たちが支持するのを許し、少数者たちがさらに富み、カネの流れの円環が続くのである。行き過ぎた経済的不平等と、民主主義的機構の喪失が、戦争の問題の根源にある。

 

新型コロナウィルス感染拡大の最大の被害者である貧困層

貧困層が新型コロナウィルス感染症による被害を最も酷く受けている。富裕層は自らを快適に隔離することができるが、貯蓄のない労働者は危険な労働環境に身を晒すか、収入ゼロによる飢餓に直面するかを選択するしかない。ジェイク・ジョンソン氏は「グロテスク」(『コモン・ドリームズ』5月28日掲載)と題した寄稿で「4100万人が新型コロナウィルス感染症の影響で失業する中、米国の大金持ちたちは5000億ドルの富を積み増した。」と書いている。

「多くの人々が苦難や困難、生命の喪失に直面する中、億万長者の富は同時に増え続けている。これは、米国社会の抱える深い不平等をグロテスクに示したものだ。」「木曜日(6月4日)に米労働省が発表した統計によると、先週、210万人が新たに失業届を提出し、新型コロナウィルスの感染拡大による大規模レイオフが続く中、実に4070万人もの米国民がこの10週間で職を失ったことになる。」

「『政策研究所』の新たな分析によれば、同じ10週間の間に、米国の億万長者の富の合計は5000億ドルも増え、計3.4兆ドルとなった。」

 

スカンジナビアにおける平等・幸福・再生可能エネルギー

グリーン・ニューディールならば、気候変動と過度な経済的不平等の問題に同時に対処することができる。この関連で、ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・デンマーク・アイスランドといったスカンジナビア諸国の社会・経済システムを見ることが有益だ。

これらの国々では、貧富の差がかなりの程度縮められた。これらの国々では、貧困は根絶されたとすらいってほぼ間違いない。同時に、スカンジナビア諸国には、気候変動に対応する強力な政策もある。従って、スカンジナビアの成功は、グリーン・ニューディールは実行不可能だと主張する人々への反論に使える。

スカンジナビア諸国は「世界幸福指数」や「人間開発指数」でもかなりの上位にランクされ、平等がもたらす利益を証明している。

幸福で持続可能な世界を実現するために、国家の内部においても、国家間においても、過度な経済的不平等を早急に減らさなくてはならないのである。(06.06.2020) INPS Japan/ IDN-InDepth News

※著者のジョン・スケールズ・アベリー(1933年、米国人の子としてレバノンにて出生)は、量子化学、熱力学、進化、科学史の分野において著作を残してきた理論化学者。1990年初頭以来、世界平和を目指す活動家。この間、「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」で活動してきた。

 

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